渋谷・コクーン歌舞伎 天日坊の感想

 

2月12日夜の部をみてきました。

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舞台としても中村屋好きとしても大満足の作品で、この数年ことあるごとに名前をきいた理由をとてもよく理解しました!し、これからは私も言う側になるんだろうなと思った笑

 

まずコクーン歌舞伎の説明からすると、みんなが想像するようなTHE 歌舞伎とはすこし違ってて、がんばって一言でいうなら「現代劇的な要素がある歌舞伎」って感じの舞台です。

今回だとまず脚本がクドカン、演出が串田和美さんという豪華メンバー!サックスやトランペットのバンド演奏があったりして、過去はスーツの群れやパトカー(警官だったかも)がいたりしました。でも舞台の根幹としてあるのはまぎれもなく「歌舞伎」なんですよ。「歌舞伎役者がやったら全部歌舞伎になる(うろ覚え)」とおっしゃったのはコクーン歌舞伎を立ち上げた勘三郎さんですが、まじでこの言葉かっこいいよね……。そして幕が上がった瞬間にその言葉を肌で感じることができるのがコクーン歌舞伎だと思う。

ちなみにBunkamuraシアターコクーンで上演されているのでコクーン歌舞伎、分かりやすい。歌舞伎関係なくシアターコクーンは見やすくてスタッフが優しくてトイレが多くて好きな劇場です。トイレが多い劇場だいすき。

平成6年にはじまって(同い年!)もう28年目と意外と歴史が長いコクーン歌舞伎ですが、そのなかでも「天日坊」「三人吉三」は群を抜いてよく名前を耳にしてたので、10年ぶりにほぼ同じメンバーで再演されるときいて本当に楽しみにしてました!

前置きが長くなりましたが、以下素人の感想です。

 

第一幕

化け猫扮する兼貞をセンターに観音院と法策が遅刻の北条時貞の到着を待っているところからスタート。緊迫した場面かと思いきや意外とコミカルに進んでいって、でっかい化け猫が登場したシーンで客席がわあっと盛り上がったのがわかって楽しかった。これから何度も登場する「マジかよ……」が早速きけたのも嬉しかったな。勘九郎さんの張り詰めた空気をふと緩ませるあの声がすごく好きです。

下人久助との関係といっしょに法策の孤独な身の上が明かされる。きっとこの時代にはよくあることなんだろうなと思いながら、今よりもっと血筋や家が重要だった価値観のなかで出自が分からない彼の心もとなさを感じた。

しんみりは続かず七之助さん演じるお六がドタバタと登場!目的があってわざとあざとく振る舞っているところ含めてかわいすぎる(T_T)かわいすぎてときめきすぎてリアルに胸をおさえてしまったよ(オタク)むせ返るような色気のなかにあどけなさもあり、こんな人に狙われる観音院に心底同情するね

 

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めでたく観音院を骨抜きにして部屋の奥に入る瞬間、盗賊の仲間たちへの目配せがさっきまでの誘惑お六ちゃんとは思えないくらい冷たくて最高でした。

法策の物語はどんどん進んで、自分とおなじ年月日にうまれた将軍頼朝の隠し子の話をきき、人を殺し、証拠品を奪って、また人を殺す。ここからとにかく転げ落ちるように悪へと染まっていく法策ですが、キーとなるのが「成りすまし」。氏素性が分からない自分を皮肉るように、その場しのぎで「何か」になりすまして一幕のさいごに「俺はだれだ」と呆然と立つ様子は痛々すら感じました。

 
第二幕

第二幕では成りすましに加えて色んな人の因果に巻き込まれていくんだけど、本当の自分の出自がわかっても法策の孤独(なのかな?)は晴れることがない。人を殺すほどに焦がれていた「自分の正体」のはずなのに喜びは見えず、誰かの名を騙ることはもう止められなくなってるんだなと思って悲しかった。

物語の残酷さとは裏腹に、演出がどのシーンもカッコよくてとても良かったです!法策(勘九郎さん)人丸お六(七之助さん)地雷太郎(獅童さん)の3人の気持ちが揃って見得を切るシーンはやっとこれを生でみれたという喜びとあいまって鳥肌がたちました。

それからもう一人殺され(妊婦さんが殺されてお腹から赤ちゃんが生まれるの、右近ちゃん主演の「衛生」でもみたけどすごく嫌な気持ちになる……)、大江屋敷詮議の場になって、頼朝の落胤(私生児のこと)だと主張する法策たちと幕府側大江廣元のバトル。廣元の顔をみて慕っていた兄と気づいた法策の表情が切なかった。

じつはなんで大江廣元が久助を騙っていたのかがイマイチわからなかったんですが、分からないことは分からないまま楽しめるのが歌舞伎!最期の大立ち回りは見ごたえがたっぷりでめっちゃ良かったです!!!私は歌舞伎の、そのときどきにより辻褄より「かっこよさ」をとる演出が大好きなので、最後の立回りでわざわざあの衣装に着替えて登場してきたときはしびれた〜!(浮世絵を参考にした衣装で黒と赤の2パターンあるうちの黒)

戦う女形が大好きなので、めったにない七之助さんのド派手な立回りがたくさん見られて楽しかったです!地雷太郎とかばい合って倒れる最期のシーンが目の前で、美しさで息が止まったのもいい思い出ですね……

二人が倒れてしばらく経って法策も破れ、現実ではないどこかで猫を抱えて「俺は化け猫だ…」とつぶやいて物語は終わる。ステージの広さと暗さも相まって法策の「無」が強調されてて怖かった。勘九郎さんが法策を「無」「本当になにもない。運命にただ流されているだけ」と言ってて残酷だな〜と思ったけど、観終わってみると真に迫った言葉だなと思った。脚本を担当したクドカンは「承認欲求の物語」と言っているけどそれは物語としての話で、法策自身はその欲求すら持っていないんだと思う。

 

今回、舞台にかなり近い席でみていたのでお話に没頭できたのですが、少し離れたときにどう観えるのかも気になる。もっとステージを広く使っているほうが好きだなとか、背景画に場面の説明書きがあるのはさすがにやりすぎではとか、細かいところで感じるところはあったけど演者側と客席の熱量が圧倒的でトータルでは大満足なお話でした。

ほか印象的だったのは、鶴松くんのコメディエンヌさ!真景累ケ淵の新吉を思い出した。虎之助さんとのかわいいカップルがお似合いで、天真爛漫な存在がこの乱暴な物語の緩和剤を担ってたと思う。

あと、バンドの存在がいつになく際立ってて、とくに法策が悪へと転じる瞬間にはトランペットが悲しく鳴ってたのが印象的でした。音楽にのれる場面もあって楽しかったな。カーテンコールをおしゃれなジャズで扇動されるの最高でした。勘九郎さんもちょっと踊りながら出てきてました笑

 

勘九郎さんがもはやなにを言えば良いのか分からないくらいすごかったな。純粋さと悪、強さと弱さ、かっこよさと情けなさのような矛盾を、ひとりのキャラクターとして存在させられるすごみを感じた。勘九郎さんが「俺を見ろ」と思いながら舞台に立ったときに目をそらせる人はいないと思う。

とにかくお兄さんの唯一無二の存在感を堪能できる時間でした!それでいて今回の役はとことん”無”なのが皮肉でありロマンを感じるところだね。

 

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渋谷・コクーン歌舞伎

 

タイミング悪く(本当に悪かった……)、12月1月と中村屋に会えなかったので、久しぶりに勘九郎さんのオーラと七之助さんの美しさを堪能できて楽しかったです!3月、4月は巡業が続きますが(2か月で巡業2つと平成中村座1つある鬼スケジュール)、どうかみなさん健やかに過ごせますように!